博物館には考古学に興味を持っている大人はもちろんのこと、考古学という言葉を初めて聞くという子供たちも数多く訪れてくる。考古学を専門に勉強をしたことがない私にとって、これらの子供たちとの触れ合いは、実に楽しい場面に出くわすことがある。
そして、一番手ごわいお客さんでもあるのだ。
大体、4500年前の遺跡といっても、小学校低学年の子供たちにとって、ピンとくる数字ではない。そもそも、自分のおじいさんやおばあさんに自分と同じ子供の時代があったなんてことも、もしかしたら考えたことも無いのかもしれない。
でも、こちらとしては、当館を見学に来てくれる無邪気なお客さんに、なんとか郷土の宝を説明しなくてはならない。4500年前という数字にキョトンとして火焔型土器を見ている子供たちに、
「これは国宝と言って、とても大切な宝物なんだよ。」
さらに
「君たちも子宝と言って、とても大切な宝物なんだよ」と続ける。
火焔型土器を見ていた目が、お互いの目を一瞬見て、笑顔を見せる子もいる。
それでもまだ、不思議そうな顔をしている子も多い。
そんな子になんとか、宝物を強調したくて「すごい」「きれい」「すばらしい」といったストレートかつ、単純な言葉を重ねるしかない。
すると突然、
「わかったよ。すごいものだってこと。 で、いくら?」
「・・・・・・・。」
するどいツッコミに窮した私は、ボケで答えるしかなかった。
「これは国の宝だから、どんなにお金を積まれてもかえん土器だ!」
以後、子供たちのからの御礼の手紙をもらうことがあるが、ギャグだけ印象に残してしまったような手紙が多くなっている。考古学専門の学芸員には申し訳ないと思っている次第である。