考古学コラム Archeology Column

コラムNo.4 遺跡の調査について

津南町農と縄文の体験実習館 山本 克

火焔街道連携協議会の対象地域である信濃川中流域には、「火焔型土器」に代表される縄文時代の遺跡やそれ以前の旧石器時代遺跡、弥生時代の遺跡など先史時代の遺跡が数多く発見されています。津南町においては、おおよそ300遺跡を数えます。これらの遺跡は、どのようにして遺跡であることが認識されて、またその内容が明らかとなってきたのでしょうか。ここでは、遺跡を明らかとする発掘調査がどのような手順でなされているのかについて紹介します。

遺跡とは、過去において「人」が活動した跡が残される場所やこれが累積した状態の場所を指します。これらは年々降り積もる落ち葉や大気中の塵、火山灰などによって、地中に埋没した状態であり、通常の状態では明らかとなることはありません。この状態においては、土中で保存されている状態にあります。遺跡というものは、無限にあるものではありません。掘ったり壊したりすると、二度と元には戻せない性格のものです。これまでの開発事業が及んだエリアにある遺跡のほとんどは、結果的に壊されてきました。そのため、今後明らかとなる遺跡については、後世まで保存していくことを前提としていくべきでしょう。

遺跡は、文化財保護法という国の法律によって保護されています。もし、開発によって土中の掘削を行う場合には、届出が必要となります。この届出に対して、実際にその場所を歩いて地形を読み、また地表面に現れている遺物を採集(表面採集)することで活動痕跡の残される可能性のある場所を推測する調査(「分布調査」・「踏査」)や周囲の住民への聞き取り調査などが行われます。また、必要に応じてその場所に遺跡があるかどうかを判断するために、掘削範囲の一部に対して行う調査(「試掘調査」)が行われます。遺跡の有無を判断するための、この一連の調査が遺跡保護のためには大変重要であるといえます。

試掘調査によって、遺跡があることがわかった場合、その性格と範囲を判断するために「確認調査」が行われます。これは、試掘調査の調査範囲を少し広げたり、さらに深く掘り下げていく調査で、発掘調査の規模や内容を判断する材料を得るための大切な調査となります。これによって、その内容が明らかとなった遺跡は、盛土するなどの保存を前提として、開発側と協議します。この協議で、どうしても遺跡を保存できない場合には、記録として遺跡を保存するための調査(「発掘調査」)が行われることとなります。

発掘調査は、その場所でどのような生活がなされてきたかを判断する材料を集める、大変緻密な調査です。二度と元には戻せない性格の遺跡を、どのような状態でどのような活動を示すと考えられるかについて、写真や図面といった記録を残します。集められた材料は、整理作業で再構成されて、調査報告書として記録保存されます。

開発行為の多い昨今、遺跡は知らぬ間に壊され、無くなっていく可能性があります。我々の祖先が、この地において生活した貴重な痕跡をどのような形であれ後の世に残すために、皆がこれを守る意識を高めなくてはならないと思います。このために様々な普及啓蒙活動がなされてきています(博学連携プロジェクトなど)。我々の時代ですべてをなくさないために、少し気を配ってみませんか。