考古学コラム Archeology Column

コラムNo.3 考古学者のもう1つの発掘作業

十日町市立下条小学校教諭 金子和宏

 信濃川中流域は縄文時代を中心とする貴重な遺跡が数多く存在しており、考古学の素晴らしいフィールドである。流域の学芸員が素晴らしい研究の成果をあげてきたことは、高い評価を受けている出土品の数々はもちろんのこと、様々な報告書や論文等でも明らかである。ところが最近、信濃川火焔街道の学芸員らがおもしろい発掘をはじめたのである。遺跡の発掘を専門とする彼らがはじめた発掘とはいったい何なのだろうか。

 信濃川火焔街道に加盟する市町村と県立歴史博物館の学芸員が『火焔街道博学連携プロジェクト』を組織し小学生の学習支援に乗り出した。土器作りや竪穴住居の復元、発掘調査など様々な体験活動を提供し子ども達を専門的な見地から指導している。するとどうであろう、自宅の庭に竪穴住居を造る子や、学芸員のところに足繁く指導を請いにやってくる子、さらには、学芸員になりたいという夢を抱く子が現れたのである。これはまさに、素晴らしい発掘作業、”人材の発掘”である。

 昨今、文化財を保護すると同時に積極的に活用していこうとする動きが活発化している。しかし、いかに価値ある文化財であってもその価値を認め、正しく理解する人々がいない限り、保護や活用の動きの継続発展はあり得ない。文化財は地域の宝であり国の宝である。また、子ども達も地域の宝であり国の宝である。その両者を発掘できる考古学者がこれからますます求められるのではないだろうか。

 将来、信濃川火焔街道から、素晴らしい考古学者や文化財を保存しながらも積極的に活用したまちづくりを進める人々が育っていくだろう。教育学を専門とする私にはそう感じるのである