考古学コラム Archeology Column

コラムNo.24 信濃川を中心としたもうひとつのクニ

津南町教育委員会 佐藤 信之

信濃川火焔街道連携協議会に加盟する新潟市・三条市・長岡市・十日町市・津南町の4市1町は、日本一の大河である信濃川流域に位置し、およそ5000年前の縄文時代中期の火焔型土器が出土しています。
 この国宝や重要文化財にも指定されている火焔型土器は、信濃川流域を中心として、ほぼ現在の新潟県域において出土確認されています。そして、日本海を隔てた佐渡島にも火焔型土器は出土しています。今から、5000年においても佐渡島は新潟県の一部でした。
 この土器の分布から現在の新潟県域を「火焔のクニ」と呼ばれています。

そして、信濃川を中心として佐渡島も含めた現在の新潟県において出土が確認されている土器がもう1つあります。それが「三十稲場式土器」です。
 この三十稲場式土器は、火焔型土器が作られた時代よりも700年ほど新しい、およそ4300年前の縄文時代後期初頭の土器です。長岡市の三十稲場遺跡から多く出土し、確認されたためこの名称がつけられました。
 この土器は、火炎土器と同様に現在の新潟県域に出土がみられます。よって、このことから新潟県には、「三十稲場のクニ」があったとも言えます。

三十稲場式土器は、それまでのバケツ状の深鉢や火焔型土器のような胴部に屈曲をもつキャリパー状の深鉢と異なり、甕状のカタチをし、口縁には無文帯を持ち、その間を4単位のアーチ状の橋状把手がつけられ、爪形のような刺突文が施されます。そして、土製の蓋が作られていることも特徴的です。
甕状のカタチや土製の蓋の存在から、もしかすると、調理や煮沸、保存方法や内容物などに変化があったのかもしれません。

そして、現在、津南町農と縄文の体験実習館においてこの三十稲場式土器を一堂に展示した「三十稲場式土器文化の世界」展(会期:平成24年9月8日~11月11日)が開催しています。
 「三十稲場のクニ」の一端を触れてみてはいかがでしょうか?