考古学コラム Archeology Column

コラムNo.16 馬高縄文館だより

野水宏美・水島 喬(馬高縄文館専門員)

<見学対応の一コマから>

昨年(平成21)9月にオープンしたばかりの馬高縄文館には、社会科見学の小学生がたくさん来ます。今年は4月~6月初めまでに500人以上がやって来ました。毎回同じような説明をしても、十人十色の反応を示す子どもたちの表情は、いつも興味深いものです。そしてそのなかには、土器や石器を見るうちに表情が変わってくる子もいます。

最近来館した明るい雰囲気の小学校は、人数が少ないためか仲がよく、楽しそうに説明を聞いていました。その中の一人の男の子の顔つきが、次第に変わってゆきます。真剣に資料を見つめ、「どうやってつくったの?」「破片がでてきたらどうするの?」「何のため?」「何でわかるの?」と次々に質問を受けました。見学を終えると、彼は私のそばにきて、少し恥ずかしげな顔で「僕は今日、考古学者になりたくなった」と言いました。

スタートをきったばかりの当館には、それ以前に長い間行われた発掘や研究、そして史跡馬高・三十稲場遺跡を整備するまでの様々な積み重ねがあります。その歴史の中には、遺跡や火焔土器に凄まじい情熱や労力を費やし、縄文時代の姿を伝えようとした多くの人々がいたのです。

見学した彼はメッセージをきちんと受け取ってくれた、そう思いました。彼の一言で、遺跡に関わった多くの人々の苦労が、いっぺんに報われたような気がしました。(野水)

<イベントで火焔土器をつくる>

馬高縄文館で縄文時代を体感してもらうために、どんな普及活動を行えばよいのだろうか。土器づくり・火おこしや弓矢の体験・石器づくり・アンギン編み等のほかに、当館ならではの体験は何かないか。馬高遺跡といえば火焔土器、その火焔土器をつくる教室こそ当館ならではのものだと思い至り、イベントの中に組み込むことにしたのです。

年度初めのイベント「火焔土器をつくろう!」として、4月25日・29日、5月2日・5日の4日間に土器の造形、5月29日に土器焼きを行うことにしました。造形だけで4日間もかかるという設定のためか申込の段階で躊躇される方もあって、参加人数は少なかったのですが、新潟市や遠く千葉県から応募された熱心な方もいました。

最初の土台づくりでは、粘土ひもを輪積みしていくと土器が広がりやすく、粘土紐そのものが太くなったり細くなったりと、参加者全員が苦労されていました。その一方で、立体的な文様の表現や鶏頭冠の取り付けなどの高度な技術に、縄文人の素晴らしさを知ることができたと感動していました。

本来は造形に40~50時間かかるコースを20間程度に短縮したので、実際にできるかどうか不安でしたが、今回は火焔土器づくりのエキスパートである「長岡土器造り同好会」の方々に全面的な応援をいただき、全員が何とか仕上げることができました。火焔土器づくりがどんなに大変なことであったことか…。体験を通して、まさに馬高の縄文人を感じていただけたと思います。(水島)